葉月洸乃介の家の隣にある皐月家の朝。
チュン、チュン、chun……、チュン、チュン、chun……。
まばゆい光の中、小鳥たちのさえずりが聞こえる。
爽やかで清々しい朝──。
小鳥の中には、AIが搭載された人造鳥のAIバードも混ざっている。
姿形も鳴き声も本物と遜色ないので見分けにくい。
これらには、防犯カメラ機能の他、鳥害が人間に及ばないよう、鳥のフンを処理したり、ごみを荒らす鳥を追い払ったり、細菌やウィルスを検知したりする機能まで備わっている。
かなりの優れモノだ。
このAIバードと同じく、人間社会に貢献する家事使用人型AIロボットが一家に一台と言われて久しい。
葉月家にメイド型AIロボットのハヅキがいたのと同様、この皐月家にも執事型AIロボットのサツキがいた。
ちなみに、男性なら執事型AI、女性ならメイド型AIというように性別で呼び名が異なる。
家の者が寝坊しないようにするのも使用人型AIロボットの責務のひとつだ。
「お嬢様、起きてくださいませ。学校に遅刻してしまいます」
AIサツキが優しく声をかける。
「ニャァ~」
飼い猫も眠る少女を起こそうとしているのか、近づいてきてそばで鳴いている。
「ん……もうちょっと、ねかせてぇ……」
ベッドで眠っている少女は朝が苦手だ。
「まもなく限界ラインを超えます。申し訳ありませんが、強制起床モードに入ります」
空中浮遊するベッドで気持ちよさそうに眠る少女の横側に回り込むAIサツキ。
続いて、両手を少女の両耳にあてる。
テン、ナイン、エイト、セブン、シックス……。
AIサツキの両手からカウント音が鳴り始める。
「わかったよ――、おきるってば!!!おきるからやめて――!」
少女が寝ぼけた声で懇願する。
「ダメです。お嬢様。完全に起きるまで止められません。大変不本意ですが、ただいまから爆音目覚ましを作動させます。失礼……」
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