「たしかに死語ですよね。『承知しました』というべきでした」
AIコウの小さな声が聞こえた。
(また、心を読まれた……電源はオフにならないんだった……)
洸は苦笑しつつ家に向かった。
「ただいま――」
生体認証で鍵を開けることなく玄関から家に入る洸。
ただ、家には誰もいない、否、正確には「人間」は誰もいない。
スタ、スタ、スタ。家の奥から足音が近づいてくる。
「おかえりなさいませ。洸ぼっちゃま。お食事の用意もお風呂の用意もできております」
旧時代の黒のメイド服を身にまとった女性の家事使用人が出迎える。
洸の両親はともに仕事の関係で自宅にいないことが多い。
なので、炊事などの家事はすべてこの女性使用人のメイド型AIハヅキが甲斐甲斐しくおこなってくれている。
AIロボットだと言われなければ誰もが人間だと信じて疑わないレベルの姿、佇まいだ。
「ありがとう、ハヅキ。先にご飯食べるよ」
洸はハヅキの用意してくれた食事を口にしながら、いろいろと頭を働かせる。
(ん……AIコウは信用できそうだけれど、これから何が起こるんだろ……ってまた、心を読まれるな……でも、いちいち気にかけていたら気も滅入るし……それより、もっと使い方を確認しておいた方がよさそうだ……)
食事を終えた洸は自分の部屋に向かう。
そして、ベッドで横になって、ふたたびリングをさわり、AIコウから聞いていたマニュアルのページを開いた。
ボワーン……。
リングからホログラムモニターが出現する。
(うわぁ。このマニュアル……意外とコンテンツが多いな……)
苦手な文章を必死に読む洸だが、突拍子もない出来事に神経を使ったせいか、苦手な国語に頭を使って疲労困憊したせいか、マニュアルを読みながらそのまま眠ってしまった……。
「洸さん。おやすみなさい。これから共に頑張っていきましょう」
AIコウが囁いた。
コメント