間の抜けた高い声で嗅覚が叫ぶ。
ブヒーン、ブヒーン、ブヒーン……。
豚の鼻息音と平たい物体が空気を切り裂く音が混ざって響く。
敵の鼻先から深緑色と土色が混ざったドロドロの塊が発射された。
その塊は、みるみるうちにマンホールのような円盤状に形状を変え、洸たちに向かってくる──。
「うげぇ……くさい……」
洸も鼻をつまむ。
久愛が洸に小声で言う。
「今……臭い物にブタって言わなかった……?」
嗅覚の発射した円盤がさらに二人に接近する。
ベシャン、ベシャン、ベシャン!
久愛の発動させた白い光の盾にぶちあたった円盤は、ヘドロが壁にぶつかったような音とともに、すべてやにわに消えてしまった。
ふたりには全くダメージがない。
「僕は攻撃だ!『テヲヤク』――!」
洸が叫びながらパンチを打つと、洸の左腕全体を赤色や紫色の混ざった火炎がつつみ、腕が伸び切ったタイミングで拳型の火炎が放たれる。
その火炎は、ゴォーと唸り声のような音をあげて風を切り、一直線に進む。そして、徐々に獅子の形を描いていった。
赤紫の火炎の獅子が大きな口を開け、牙を剥き出しにして空中を駆けていく。
バゴンッと、火山の噴火で飛び散った岩石が地面に叩きつけられるような音が響いた。
洸の放った火炎の獅子が、異形の猪豚、嗅覚の鼻先から頭にかけてぶち当たったのだ。
洸の攻撃が命中した箇所に炎がまとわりつき、赤紫色に染めていく──。
「ブ貧……あつ、熱いじゃないか……焼き豚にする気かブ貧……」
なかなか消えない火炎に手こずり、苦しそうな鼻息をする嗅覚。
「こんな感じで……いいの?」
いぶかしげな表情の久愛。
「いいみたいだね!」
手ごたえを感じる洸。
洸と久愛は目で合図をおくりあい、軽くうなづく。
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