ファイブ……フォー……スリー……。
「まって! 起きたようーサツキ! 私、もう完全に起きたよー!」
半泣きでさけびながら起き上がる少女。 「ちっ、起きたか……」
AIサツキはさも残念そうに小声で言いながら、両方の掌を少女の耳から離す。
「いま、舌打ちしたでしょ? ガッカリしてたよね? サツキ!」
「ニャァ~」
飼い猫もツッコミをいれているのかAIサツキに向かって鳴く。
「いえ、滅相もございません。寝ぼけておられるのですか? お嬢様」
爆音目覚まし機能は、臨床実験で、起きなかった者がゼロ人、つまり、起床率100%の優れた機能だ。
その上、人体への健康被害はなく、本人だけに聞こえる性質なので、近所迷惑にも、家族への迷惑にもならない。
彼女は一度食らって以来、爆音目覚ましを死ぬほど恐れている。
AIサツキの爆音目覚まし機能は、両方の掌からその爆音が出せる仕様にカスタマイズされていて、その威力は絶大だ。
AIサツキは、一度実行したときのリアクションに味をしめて、次の機会を楽しみにしているのだった。
「ふわぁ……」
欠伸をする少女の名前は、皐月久愛。
久愛は洸と同じ中学一年生。洸とは幼馴染だ。
根っからの天然キャラだが、容姿端麗。少しタレた大きな瞳がチャームポイント。腰の近くまである長い髪もさらさらできれいだ。
ちなみに、飼い猫の名前は「タマヨリ」。
「あ、いけない、用意して早く出なきゃ……」
久愛は慌てて制服に着替えて家を出た。
タマヨリも見送って鳴く。
「ニャァ~」
久愛は遅刻しないか焦りながらも、昨夜のとんでもない出来事を思い返していた。
コメント