「善意のAI戦士に大人はいないですね。かつては大人を選んだ善意のAIもいましたが、漏れなく失敗しました。大人はすぐに洗脳されてしまいました」
洸はうなずきながら聞き入る。
「余程悪意のAIが巧みなのか……悪意のAIの誘惑に抗えず……洗脳されている者も大人が大半なのです。酸いも甘いも知る者、清濁併せ呑める者は不適格なのです」
「なるほど……」
(って、相変わらず、難しい語句ばかり使うよなぁ……スイモアマイモ? セイダクアワセノメル?)
洸は心の中でツッコミを入れた。
「あ、そうでした。難解な語彙を使い過ぎました……すみません。でもまぁ、難しい言葉を使った方が洸さんのためになるでしょう? 洸さんは国語の成績を上げたいのでしょう? 私は、あなたの代理人アジョンとしてあなたの力になりたいのです。フフッ」
薄ら笑いを浮かべたホログラムのAIコウが憎まれ口を叩く。
「笑いながら言ったな、最後……つか、僕が、国語、苦手だと知った上で、敢えて難しい言葉を使っていたんだな? お前、良いヤツなのか、嫌なヤツなのか、分かんないな」
「もちろん、いいヤツですとも」
「「自分でいいヤツというやつほど怪しい!」」
洸とAIコウが同時に発言してかぶる。
「「あははははは」」
ふたり?とも、笑った。ふたりが少し打ち解けあった瞬間だった。
「じゃぁ、とりあえず、家に帰るよ」
「はい、かしこまり!」
というや否や、アジョン姿のAIコウは消えた。あたりが静寂に包まれ、日が沈んだ暗い夜が洸に空腹感を思い出させた。
(あ、はやく家に帰ってご飯食べなきゃ……にしても……かしこまりってなんだよ。古いな……もはや死語……ははは)
なんて思いながら、洸はボードに乗りなおした。
「洸さん、聞こえてますよ。フフッ」
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