「あ、そうそう、このリング、洸のリングと同じ型だよね?」
「ということは……久愛も怪しいAIから受け取ったんだよね?」
「そう! 昨日の晩にね」
「そか、僕も同じだ。で、渡された理由もきいた?」
「聞いたよ。まだ、半信半疑だけど。本当なら何とかしなきゃって」
ふたりは、昨晩の出来事について少し情報交換し合った。
AIから聞かされた話はほぼ同じだったが、マニュアルに書かれていた属性やスキルは、洸と久愛とで内容に相違があった。
「洸が教えて欲しいことって、リングの話なの?」
「そうだよ。てか、僕の苦手な語句がいっぱいだったから……」
「なるほど!今から、チェアパークでもう少し話しましょ!」
(そうだよね。洸にとっては、あのマニュアルは難題だよね……)
ふたりは近所の公園でお互いの属性やスキルを確認することにした。
宙に浮く椅子が特徴的で目につくその公園は、近所の住民からチェアパークという愛称で呼ばれていた。
塾から公園まで洸のボードに二人乗りで走る。
「うわぁ。ボードの二人乗り久しぶりだぁ」
「久愛、ちゃんとつかまってて」 「はーい」
現在では、洸の乗っている形態のボードは、公道を二人乗りすることまで許されている。
二人乗りの際には、板の面積を広くすることができる。それでも、旧時代の自転車やバイクの二人乗り以上に体の密着度が高い。
(久しぶりに話せただけでなく、ボードの二人乗りまで……)
久愛は、公園に着くまでずっと顔を紅潮させ、一言も話せなかった。
スゥーと聞こえるかどうか程度の小さな音を立ててボードが止まる。
降りたふたりは、歩いて公園の中央に向かった。
ラウンジチェアのような、座り心地の良い設計の椅子に腰を掛けると、宙に浮く椅子が少し沈む。
二人ともリングに触れてマニュアルを呼び出した。
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