洸のアジョンが青紫色ベースなのに対して、久愛のアジョンは真珠色ベースのドレスだ。
優雅さを感じさせるブラウスの裾はコートのように長く、何層かに重なったレースのついたスカートは可憐だ。
ほっそりした脚にはニーハイのソックスと一体化したブーツを履いている。すべて真珠色ベースだが、ところどころエメラルドグリーンのラインが入っていた。
黒やピンクなどお約束の色が一切入っていないところに久愛の趣向が反映されていた。
髪の毛もパールカラーだが、瞳は洸と同じ青紫色だ。
「久愛のアジョン、すごいね」
正気に戻った洸の眼差しに映る久愛の姿は、美しさを超えて女神のような神々しさを感じさせた。
「えへへ。かわいいでしょ? 洸もかっこいいじゃん!」
「そ、そっかなぁ……」
バトルモードなので、ふたりともホログラムと精神が同期し、体は眠りにつく。
眠っている自分の姿を見ながら、アジョン姿の久愛が言う。
「あぁ、本当に寝るんだね、私達の体……」
「だね。久愛、はやいとこバトルを始めよう」
洸がバトルトレーニングモードを選択しようとした、まさにそのときだった……。
<<ブワーン>>
チューバで奏でるような重く太い低音が鳴り響く──。
あたり一面に土煙が立ち込めた。
土煙の狭間からホログラムの光がのびて光の膜を張る。
それが壁のように広がり公園を覆うや否や、空中にフィールドが現れた。
そして、得体のしれない、豚のような、猪のような巨大なアジョンが現れる──。
ふたりが設定する前にバトルフィールドが設定されたのだ。
ふたりの前に現れたのは通常の猪や豚の数倍はある大きさの獣だった。
体色は濃い深緑色をしている。
「ブヒン、ブヒン!!!」
養豚場で喧嘩している豚の鳴き声のような甲高い音声が響く。
(なんだ? この巨大な動物は? ブタか? ゾウ並みの大きさだよな?)
(え? これ、訓練用のアジョン……だよね……? 目がかわいいし……)
ふたりとも、まだ状況が呑み込めていなかった……。
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