「ま、マジか。恐れていたシチュエーションだ。ぶっつけ本番じゃないか」
「このかわいい獣さん、敵だったんだ……『嗅覚』……」
先ほどまでの余裕が嘘のように動揺を隠せないふたり。
「洸さん、パイアといえば農作物に被害を与えるだけでなく人間を殺すこともあるといわれる恐ろしい幻獣です。スキルを使って戦いましょう!」
「久愛さん、『嗅覚』は大きさからして攻撃力が高そうですから、洸さんをサポートしてあげてください。怖がっている暇はありませんよ!」
AIコウとクウがそれぞれ助言する。
「「倒さないと洗脳されてしまいますよ!!!」」
AIコウとクウがまた同時に叫ぶ!!!
「ま、マジか。わかった。いくぞー」
洗脳されてしまうという言葉に奮起させられる洸。
「えーっと、私のスキルは……、バ、バジトウフウ――」
慌てる久愛が先にスキルを唱える。
眼前の『嗅覚』に対して、久愛が右手を向ける。
右の掌から、パール色の光の帯が放射線状に広がって、光の環を残して消える。
光の環の円周から中心に向かって、何重もの光の環が魔方陣を描きながら薄い膜をはっていった──。
久愛のスキル『馬耳東風』によって、大きな円形の盾が生じたのだ。
久愛はもちろん、洸の前にまでおよぶその白い光の盾は、ふたりをガードするかのようにキラキラ光り続けている。
「バトル未経験のお前らにそんなスキルは豚に真珠だブヒン! このスキル一発で倒してやるブヒン! くらえー!『クサイモノニブタ』――!」
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