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第23話 手を焼く

 けたたかこえ嗅覚スメールさけぶ。

 ブヒーン、ブヒーン、ブヒーン……。

 ぶた鼻息音はないきおんひらたい物体ぶったい空気くうきおとざってひびく。

 てき鼻先はなさきから深緑ふかみどりいろ土色つちいろざったドロドロのかたまり発射はっしゃされた。

 そのかたまりは、みるみるうちにマンホールのような円盤状えんばんじょう形状けいじょうえ、こうたちにかってくる──。

「うげぇ……くさい……」

 こうはなをつまむ。

 久愛くうこう小声こごえう。

いま……くさものにブタってわなかった……?」

 嗅覚スメール発射はっしゃした円盤えんばんがさらに二人ふたり接近せっきんする。

 ベシャン、ベシャン、ベシャン!

 久愛くう発動はつどうさせたしろひかりたてにぶちあたった円盤えんばんは、ヘドロがかべにぶつかったようなおととともに、すべてやにわにえてしまった。

 ふたりにはまったくダメージがない。

ぼく攻撃こうげきだ!『テヲヤク』――!」

 こうさけびながらパンチをつと、こう左腕さわん全体ぜんたい赤色あかいろ紫色むらさきいろざった火炎かえんがつつみ、うでったタイミングで拳型こぶしがた火炎かえんはなたれる。

第23話 手を焼くの挿絵1

 その火炎かえんは、ゴォーとうなごえのようなおとをあげてかぜり、一直線いっちょくせんすすむ。そして、徐々じょじょ獅子ししかたちえがいていった。

 赤紫あかむらさき火炎かえん獅子ししおおきなくちけ、きばしにして空中くうちゅうけていく。

 第23話 手を焼くの挿絵2

 バゴンッと、火山かざん噴火ふんかった岩石がんせき地面じめんたたきつけられるようなおとひびいた。

 こうはなった火炎かえん獅子ししが、異形いぎょういのぶた嗅覚スメール鼻先はなさきからあたまにかけてぶちぶちあたったのだ。

 こう攻撃こうげき命中めいちゅうした箇所かしょほのおがまとわりつき、赤紫あかむらさき色にめていく──。

「ブヒン……あつ、あついじゃないか……ぶたにするかブヒン……」

 なかなかえない火炎かえんこずり、くるしそうな鼻息はないきをする嗅覚スメール

「こんなかんじで……いいの?」

 いぶかしげな表情ひょうじょう久愛くう

「いいみたいだね!」

 ごたえをかんじるこう

 こう久愛くう合図あいずをおくりあい、かるくうなづく。

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