(は、話が長い……めんどくさい……)
国語が唯一の苦手科目である洸は、思わず心の中でぼやいてしまった。
「あ、洸さん。すみません。トリセツ、長いですよね。一度、休憩しましょう」
(……やっぱり……心の中まで……読まれているよね……)
「一部始終説明すると一朝一夕には終わりませんし、『スキル』の話は、マニュアルページでも調べられますしね。ただ、肝腎要の部分だけは先に話しておきます」
「肝腎要って???」
(コイツ、わざと四字熟語とか難しい言葉を使っているのか?)
「この代理人アジョンは、他のアジョンから攻撃を受けると相手の色に染まっていきます。洸さんは青紫色の属性なので、攻撃した相手は青紫色に染まります。敵である悪意のAIの攻撃を受けたときの染色は基本的に黒です。全身が染まった時点でアジョン自体が動けなくなり、しだいに消滅します」
「し、死んでしまうのか?」
「いえいえ。死にはしません。ちなみに、アジョンはアジョンにしか攻撃できないし、また、アジョンからしか攻撃されません。ですが、アジョンが完全に消滅すると、本人であるリング所持者は気絶します。しばらくすると悪意のAIに洗脳されます。攻撃したアジョンが善意のAIなら洗脳はされませんけどね」
「洗脳……つか、敵も人間が操っているの?」
「難しい質問ですね。その点は枝葉末節になるので、ひとことで簡単に答えるなら、敵を人間が操っている可能性はないとはいえないです。ただ、洗脳された後にリングを着けてアジョンと同期して戦っているAI戦士の話を耳にしたことはありません。あと、バトルでは属性やスキルが大きく影響してくるのですが……」
(話、長いし、難しいし……)
洸は再び心の中でぼやく。
「さっきから、話が長いだとぉ? 難しいだとぉ?」
突然 、AIコウが怒ったような、太く低い声でさけぶ。
洸の表情がまた瞬時に強張る。
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