「では、今から説明させていただきます」
洸はふてくされた顔で黙っている。
「まず、このリングには電源のオン・オフはありません。常時起動しています。ボタンのうち、青紫色に光っているボタンをタップするか、『アジョン』と口にすると、この私が今のようにホログラムで出現します。このホログラムはリング所持者の『代理人』という意味で『アジョン』といいます」
「ふむ……たしか、代理人ってエージェントと言うんじゃなかったっけ? 何かの映画で観た記憶があるけど……」
「英語ではそうなりますね。アジョンはフランス語です。話を戻しますね。
敵と戦うバトルフィールド外では、今のように自分とは別の実体のように見たり、話したりできますが、バトルが始まると、リング所持者と同期します。同期すると、自分の体を動かすようにアジョンを動かせます。ですが……他のアジョンなどの敵に攻撃する場合は、『スキル名』を発声しなければなりません」
「バーチャルリアリティゲームによくある形だね。でも、発声しないと一切技が出せない仕様は旧式のゲームでも無かったよ?」
「はい、これもAI制御法から生じる制約になります。AI自体が直接人間に攻撃していなくても、人間へ危害を加えているのと同視される場合は、中央政府のシステムにより強制的にシャットダウンされます。だから、リング所持者である人が命令しないと、アジョンは攻撃できない仕様になっています。今みたいに人工知能として会話は十分できますけどね」
「なるほど。ややこしいけど……人間がAIへ、または人間が人間に攻撃している形になればオーケーってことだね」
「そうです。さすが洸さん。呑み込みが早いですね。説明を続けますよ。リング所持者は、レベルに応じた強さの技『スキル』を発動させて攻撃することができます。たとえば、炎属性の洸さんなら、『テヲヤク(手を焼く)』と声に出して言えば、その意味にちなんだ炎属性のスキルが発動します」
「意味にちなんだスキルになるんだ……マジか……」
「はい。初期値の洸さんでも、他に、『――』とか、『――』などのスキルもありますよ」
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